彼女の心は、まるで夏の終わりの空のようだった。青い空が段々と薄れていき、最初は一片の雲さえ気にも留めなかったのに、いつの間にか薄暗い影が忍び寄っていた。9ヶ月の恋は、まだ新鮮で甘い香りを放っていた。彼
と過ごした日々が、彼女の心を満たしていた。しかし、その美しい時が、ほんの一瞬で崩れ去った。
彼がいなくなった今、彼女は日々の中で何を奪われたのかを思い知らされる。彼の笑顔、優しい声、耳元でささやいた「大好き」という言葉…。それら全てが、まるで夢のように遠い存在となってしまった。彼女は、自分の心の隙間を埋めるために、何かを探していた。
ふとした瞬間に彼の姿が脳裏をよぎる。彼と笑い合った公園のベンチ、その帰り道で交わした約束。彼女は心の奥にあるその小さな記憶と向き合うことを恐れていた。思い出は時に美しすぎて、切なさを伴って蘇る。学校が始まる頃、彼と再会するという現実を考えると、胸が締め付けられる。彼を見かけた瞬間、全ての感情が溢れ出してしまうのではないか、そんな不安が彼女を包む。
その日、彼女は公園へ向かった。白いベンチに座りながら、彼女は自分の心に問いかけた。「どうして別れたのか？」彼の言葉は今でも心の中で反響する。「君は、おれには向いてない」。それが彼女の心に突き刺さった。愛されていないと感じることは、耐え難い痛みだった。しかし、彼女は気づき始める。愛されることだけが、全てではないのかもしれない。
彼女は目を閉じて、深く息を吸い込む。彼の思い出、その温もりを感じながら、同時に自分の未来を描いていた。彼はもういないけれど、彼女は彼との思い出を糧にして、自分を大切にすることができるのではないか。彼が与えてくれた愛の一片は、決して失われることはないのだと。彼女は、その瞬間、涙が頬を伝うのを感じた。涙は悲しみではなく、再生の証。
心は少しずつ癒されていく。彼のいない未来を恐れるのではなく、新たな一歩を踏み出すための準備を始める。彼女は決して彼を忘れることはないだろうが、自分自身を許し、少しずつでも前に進んでいけることを理解した。それが、彼女にとっての新しい愛の形なのかもしれない。
