彼女は、夜遅くに公園のベンチに座っていた。星空を見上げると、過ぎ去った時間が彼女を包み込む。4年前、彼と一緒に見上げた星々と、手を繋いだ温もり。その瞬間、すべてが永遠に続くと思っていた。しかし、今はそ
の影だけが彼女を抱きしめる。
心の奥に埋もれた記憶が波のように押し寄せる。彼の笑顔、やさしい声、そして一緒に過ごした日々。泣かなくなったのは、あの時の彼の言葉が冷たくなってしまったからだろうか。「時間が経てば、きっと忘れられる」と彼は言った。彼女はその言葉を信じたが、今も未練は消えない。無関心にはなれない自分がいる。
周りを歩く人々の笑い声が耳に残る。何気ない日常の中で、彼女は彼を思い出すことが多い。彼のいない生活は初めての静けさを与えてくれたが、心のどこかで彼を求めている自分に気づいていた。時間が解決してくれると言われるけれど、実際のところは、忘れることではなく、受け入れることだったのではないか。
ある日、インスタグラムを開くと、彼の投稿が表示された。幸せそうな笑顔、肩を寄せ合う女性。その瞬間、胸がざわつく。彼は進んでいる。彼女は何も変わらず、彼のことを思い続けている。彼の幸せを願いながらも、自分の心が切り裂かれるのを感じた。時間は、彼女を解決には導いていない。ただ、心を固く閉ざすことを少しずつ教えていた。
ベンチの下で、彼女は小石を蹴った。その音は、彼女の心の中の痛みのようで、どこか心地よかった。彼女の心の中には、彼の記憶が住み着いていて、今でも大好きだという事実。それを受け入れ始めていた。泣くことはなくなったけれど、彼への思いは消えなかった。でも、その思いを抱えて生きることで、彼女は強くなれるのかもしれない。
星は、彼と彼女の距離を教える。彼の幸せを見守ることで、彼女は不意に自分の幸せも見つけるかもしれない。彼の笑顔が、彼女の未来の一部になったことを、時間が少しずつ教えてくれている。そう、彼女は知る。時間は、解決するのではなく、ただ、癒してくれる。それは彼女の心に新しい道を作るための、静かな儀式のようなものだった。

