夕焼けが校舎の窓を赤く染め上げる頃、彼女は一人、教室の隅にいた。心の中は嵐のように荒れていて、どこか懐かしい風景に目を向けても、その色は目に映らない。彼を振り返ると、その背中は遠く感じられた。彼がもう
いない空間は、まるで秋の枯れ葉のように冷たくて、いつまでたっても温かさを取り戻すことができなかった。
友達が周りで笑い合う声が聞こえていたが、その喧騒は彼女には遠い世界の出来事のように思えた。何も感じないわけではない。彼女の心は、失ったものの大きさに打ちひしがれ、彼との思い出が蘇ってきては、また押し流される。彼が教えてくれた小さなジョークや、ふとした瞬間に交わした視線。全てが今は涙に変わっていく。
学校を出て、一人で帰る道すがら、彼女は思いを馳せた。失恋したことによって、彼女の心の中に空いた穴は、どんなに時間が経っても埋まることがないのではないかと感じる瞬間がある。それでも、ある朝、窓を開けて空気を吸い込むと、少しだけ気持ちが楽になった気がした。彼女は、こうやって時間が経つことで、少しずつ自分を取り戻していくのだろうか。そう思った。
数週間が過ぎ、彼女は友達と一緒にカフェに寄ることにした。あふれる笑い声と共に、心の奥底にあった不安が少しずつ溶けていくのを感じた。そこで目にしたのは、彼と同じように笑う男の子だった。彼は、彼女の薄暗い心を一瞬で明るくするような笑顔を持っていた。なんだか懐かしくも、新しい感覚が芽生えた。
彼女は思った。失恋は辛かった。でも、その痛みがあったからこそ、今の笑顔が輝いているのかもしれない。彼との思い出も、彼女の一部であり続けるのだろう。そのことに、少しずつ気づくことができた。そして、彼女は心の中の「彼」と別れを告げることにした。あの悲しみを内包しながら、これからの未来を歩んでいくために。
そうすることで、彼女は新たな一歩を踏み出す準備が整ったと思えた。失恋の痛みは、彼女を強くし、次の恋へと導く明るい道標になっていたのだ。彼女の胸には、もう一度愛する勇気が芽生えていた。失ったものが全てではなく、得たものもあるという希望の光を見つけたのだ。

